学会発表(日本薬学会・第139年会)

肌への保湿効果に着目し城西大学と弊社にて行っている共同研究の成果について、日本薬学会に於いて発表を行っております(2015年第135年会~)。

※実験内容には、in vitro(試験管)やマウスを用いたものがあり、実験結果が人体への有効性を直接証明するわけではございません。

 

乳酸菌生産物質の生物系薬学試験(皮膚・感覚器官)1

乳酸菌生産物質に含まれるトリリノレインのHR-AD 給餌ヘアレスマウスの経表皮水分損失量に対する影響

玉根 強志、鈴木 龍一郎(城西大学薬学部)、徳留 嘉寛(城西大学薬学部)

於:幕張メッセ(2019年3月23日)

【目的】
豆乳を乳酸菌で発酵させて得られる乳酸菌生産物質には中性脂肪値の低下などの生理活性が報告されている。また不飽和脂肪酸にはHR-AD投与ヘアレスマウスの経表皮水分損失量(TEWL)および角層水分量の改善に寄与していることが報告されている。我々は、乳酸菌生産物質中の脂質成分に同様の効果があることを報告したが、乳酸菌生産物質中の脂質成分にトリリノレインが多く含まれていることを見出し、この成分に着目してアトピー性皮膚炎様モデルマウスの皮膚に及ぼす影響について検討した。

 

【方法】
アトピー性皮膚炎様モデルマウスはHR-1系ヘアレスマウスにHR-AD飼料を一定期間給餌することで作成した。乳酸菌生産物質は豆乳を乳酸菌で培養して得た。トリリノレインは乳酸菌生産物質から脂質を抽出した後にカラムにて分画しNMRスペクトルを解析し、構造を推定した。経口投与の濃度はTLCプレートの画像解析から、乳酸菌生産物質と同様のトリリノレインとし、ゾンデを用いて投与した。比較のため乳酸菌生産物質の水溶性成分およびトリリノレインの標準品も同様に投与した。

 

【結果・考察】
ヘアレスマウスにHR-AD飼料を6週間給餌することでTEWLは上昇した。このマウスに乳酸菌生産物質、それより抽出したトリリノレインおよびその標準品を経口投与した結果、実験開始約1週間後からTEWLが改善する傾向があったが、水溶性成分では改善しなかった。またトリリノレインを含む群では表皮肥厚の抑制傾向が見られた。以上の結果からHR-AD飼料給餌ヘアレスマウスに対するTEWL上昇の抑制および表皮肥厚の抑制には乳酸菌生産物質中のトリリノレインが関与することが示唆された。

 

乳酸菌生産物質の生物系薬学試験(皮膚・感覚器官)2

乳酸菌生産物質のヒト三次元培養表皮に対するセラミドと分化への影響

大塚 萌(城西大学薬学部)、玉根 強志、徳留 嘉寛(城西大学薬学部)

於:幕張メッセ(2019年3月21日)

【背景および目的】
乳酸菌生産物質は、ビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌が発酵過程において産生する代謝産物であり、腸内細菌のバランスを正常に保持し、免疫等に関与しており、生体の様々な生理機能に対する効果が報告されている。昨今、腸内環境と皮膚生理の関係性について注目されており、乳酸菌がアトピー性皮膚疾患の予防や治療に有効であることが報告されている。しかし、体外から摂取した生菌は腸内細菌叢とは異なるため摂取しても腸内での増殖や定着が難しい。そこで、腸内環境に関係なく体内に吸収される乳酸菌生産物質に着目した。今回我々は、乳酸菌生産物質のヒト三次元培養表皮の分化に対する影響を明らかにすることを目的とした。

 

【方法】
ヒト三次元培養表皮モデル(LabCyte EPI-MODEL 6D)の基底層側に乳酸菌生産物質(0.01、0.1、1.0%)になるよう添加し、7日間培養した。表皮モデルの経表皮水分蒸散量(Transepidermal Water Loss:TEWL)をVAPO SCANを用いて測定した。表皮モデルから脂質を抽出し、セラミド(Cer)、遊離脂肪酸(FFA)およびコレステロール(Chol)を定量した。表皮モデルからRNAおよびタンパク質を抽出し、分化関連の遺伝子およびタンパク質の発現量を定量した。

 

【結果および考察】Control群と比較して、乳酸菌生産物質1.0%群においてTEWLの減少が認められ、脂質量ではCer[NS]、[AS]、[AP]、FFAおよびCholの増加が認められた。また、分化関連の遺伝子発現量において、InvolucrinおよびTGaseが乳酸菌生産物質濃度依存的に増加し、タンパク発現量においてもTGaseの増加が認められた。以上の結果から、乳酸菌生産物質添加により表皮中の分化関連の遺伝子およびタンパク質が促進され、分化に伴って角層中のセラミド量が増加することで、角層のバリア機能を促進させることが示唆された。

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